軍神 杉本 五郎中佐 「緒 言」
緒 言
吾児孫の以て依るべき大道を直指す。
名利何んするものぞ、地位何物ぞ、断じて名聞利慾の奴となる勿れ。
士道、義より大なるはなく、義は 君臣を以て最大となす。
出処進退総べて 大義を本とせよ。
大義を以て胸間に掛在せずんば、児孫と称することを許さず。
一把茅底折脚鐺内に野菜根を煮て喫して日を過すとも、専一に 大義を究明する底は、吾と相見報恩底の児孫なり。
孝たらんとせば、大義に透徹せよ。
大義に透徹せんと要せは、すべからく先ず深く禅教に入つて我執を去れ。
もし根器堪えずんば、他の宗乗に依れ。
戒むらくは宗域に止まつて奴となる勿れ。
唯々我執を去るを専要とす。
次に願わくは、必死以て 大義擁護の後嗣を造れ。
而してそは汝子孫に求むるを最良とし、縁なきも大乗根器の大士ならば次策とす。
一箇忠烈に死して、後世をして憤起せしむるは止むを得ざるの下策と知れ。
よろしく大乗的忠の権化、楠子を範とせよ。
歳々大義の滅し去ること、掌を指すよりも明白なり。
汝ら 大義の章々を熟読体得し、協力一致、大義護持以て 皇國を富岳の安きに置き、
聖慮を安んじ奉れ。 至嘱々々
父 五 郎
正 殿 外
兄弟一統